1.湧き水が涸れた
池に流れ込む川はありません。湧き水が池をつくっていました。かつては、池の水量6.1万トンに対して、1日に3万トンもの湧き水が出ていたそうです。昭和30年代に入ると湧き水が減り始め、昭和38年5月には池が干上がってしまいました。その後も何度か池は干上がり、池の動植物は大きな影響を受けました。
湧き水は、雨水が地面からしみ込んで地下水となり、それが地上に出てきたものです。そこらじゅうの地面がコンクリートで被われてしまったことや、地下ずいの使い過ぎが、湧き水が涸れた主な原因として考えられています。 昭和45年までに5本、さらに平成5年から8年にかけて3本の井戸を堀り、合計8本もの井戸から汲み上げた水が池へ流されています。しかし、その水量は1日に0.4万トンくらいで、かつての湧き水の量(3万トン)の1/7にもなりません。
2.沢山の鯉やソウギョが放たれた
昔の井の頭池にはほとんどすんでいなかった鯉や中国産のソウギョが沢山放たれました。今は、ソウギョはほとんどいませんが、巨大な鯉が沢山います。(巨大な鯉も、2回の「かいぼり」により、ここ最近は姿を見ないです。)
鯉やソウギョは水生植物を食べてしまいます。また、鯉は小型の動物(魚や昆虫、貝など)も食べてしまいます。沢山の大きな鯉がいると、植物にも動物にも大きな影響を与えているハズです。3.水生植物がなくなった
水草などの水生植物は水を綺麗にする働きがあります。また、水生植物が茂ったところは魚や様々な生き物が小さい時に育つ場所としても大切です。しかし、今の井の頭池には水生植物がほとんどありません。岸近くの浅瀬がほとんどなくなってしまったこと、水質や透明度が悪いこと、岸近くは大きな木の陰になって太陽が当たらないことなどが考えられますが、沢山いる鯉や鴨、アメリカザリガニが水生植物を食べてしまうことも、大きな影響があると考えていいでしょう。
4.盛んな「えさやり」
公園利用者が、鯉や鴨にえさを与えています。毎日、えさが投げ込まれていない時がないほど、一日中盛んに行われています。一人一人の与える量がわずかでも、合計すれば、ものすごい量になります。湧き水が沢山あったころには影響は小さかったかもしれませんが、現状では、池の水を汚している最も大きな原因となっていると思われます。特に、冬になって、渡り鳥の鴨たちがやってくると、えさの量は膨れ上がります。
5.増えた鴨
カルガモのように1年中井の頭池で暮らしている鴨もいますが、多くの鴨は冬に越冬のために北から渡ってきます。50年くらい前と比べると、ここ数年はおよそ2倍の数、およそ千羽もの鴨がやってきます。「えさやり」がより多くの鴨を呼び込んでいるのかもしれません。糞も増えて池の水をさらに汚しています。水生植物や小動物(魚やエビ、昆虫など)を食べてしまう鴨もいます。
6.外来生物が占拠
ブラックバス、ブルーギル、錦鯉、ミシシッピアカミミガメ、アメリカザリガニといった外来生物が池に放たれてしまい、今では、もともとすんでいた生き物はいなくなったり、少なくなったりして、この池はほとんど外来生物に占拠されてしまいました。(こちらも、2回の「かいぼり」によって、外来生物はだいぶ駆除されました。)
7.鯉が減った
平成18年の6~7月にかけて、井の頭池に大きな出来事がありました。
鯉だけがかかり、死亡率が高いことで知られた伝染病のコイヘルペスが流行したのです。病気が流行する前にどれくらいの鯉がいて、何尾残っているのかは分かりません。分かっているのは、わずか1ヶ月の間に1,000尾近くの鯉の死体が池から回収され、井の頭池の鯉がだいぶ少なくなったことです。昔の井の頭池には、もともと鯉はいなかったか、いてもごくわずかだったとのことですから、鯉の数が減り、井の頭池は元の状態にちょっと近づいたと考えられます。何でも食べてしまい、井の頭池の中ではとても大きな存在だった鯉が減って、今後、どのような影響が出てくるのか見守りたいと思います。